好きな食べ物は何ですか?
「好きな食べ物は何ですか?」
初対面の人と話すとき、こんなことを聞かれたことはありませんか?
人にはそれぞれ食べ物の好みがあります。和食が好きな人もいれば、洋食が好きな人もいます。洋食が好きな人の中には、ハンバーグが好きな人がいればパスタが好きな人もいます。パスタが好きな人の中にも好みはあって、ミートスパゲティが好きな人がいればカルボナーラが好きな人もいます。このように人には色々な好みがあって、それが人としての個性でもあり、多様性を生んでいます。
なぜそれが好きなんですか?
「なぜそれが好きなんですか?」
好きな食べ物を答えた時、好きな理由を聞かれて困ったことはありませんか?
「カルボナーラのチーズのこってり感が、なんとも言えないんですよね」
なんとか理由をひねり出してはみるものの、どうもしっくりこなくて自分で自分をごまかしているような気さえしてきます。それはなぜかと考えてみると、おそらく言葉では表せない感覚的なものだからだと思います。結局その食べ物が好きな理由は1つです。
「おいしいから」
「おいしいから好き」これは人間に限った話ではありません。他の生き物にも当てはまることなのです。
トウゾクカモメとは
ここは日本の太平洋側のとある港町。海岸線に沿って続く防護壁のコンクリートによって、陸と海とが隔てられ、船着き場には中小の漁船が係留され、波に合わせて上下に揺られています。
人影はまばらで、釣り人が何人か海へ糸を垂らしているのが見えるくらい。厚い雲と吹き付ける磯風に、少し肌寒さを感じる初春の漁港。
空を見上げると、1羽の鳥が海風に乗って飛んでいます。全体的に黒っぽく、頭部から背中にかけては黒褐色。お腹は白く、脇は褐色の横じまがあります。全体の黒っぽさとは違い、顔は白く、全体の配色や大きさからカモメを連想させます。
でもこの鳥はカモメではありません。なぜならカモメと違って尾羽の形が独特で、スプーンのような形をしているからです。この鳥の名は「トウゾクカモメ」。物騒な名前ですが、特徴的な習性からこの名がつけられました。
では、その特徴的な習性とはなんでしょうか。しばらく様子を見てみましょう。
トウゾクカモメの習性とは?
海に面する崖から、何かが飛び立ちました。トウゾクカモメと同じような大きさですが、頭が白く、全体も白っぽいため違う種類。あれはどうやらウミネコのようです。餌を求めて沿岸へ飛び立っていったようです。
しばらくすると、さきほどのウミネコが戻ってきました。口には小魚を加えているようです。するとそこへやってきたのがトウゾクカモメ。他の鳥たちよりも高い高度を旋回してましたが、ターゲットを見つけると高い高度から急降下し、瞬く間にウミネコのくわえていた小魚を奪っていってしまいました。
この習性こそが「トウゾク」とつけられた由来です。つまり他の鳥のエサを奪う行為が人間の「盗賊」に見立てられてました。物騒ですが、鳥にとっては生きるための必要な行動です。決して責められるものではありません。
トウゾクカモメに似た鳥
もう一羽、飛んでいるカモメがいます。姿かたちはさきほどのトウゾクカモメと似ていますが、1点だけ違いがあります。それはクチバシが鮮やかな黄色だということです。
この特徴をもつカモメはおそらくあの鳥に違いありません。少し様子を見てみましょう。
トウゾクカモメに似た鳥の決意
しばらく海風に乗っていましたが、何かを見つけたのか、ものすごいスピードで急降下していきます。さきほどのトウゾクカモメより圧倒的に速く、例えるなら流れ星が瞬くその瞬間と同じくらいの速さです。
瞬いた先はさきほどのウミネコが飛び立った崖。そこにはウミネコのコロニーがあり、その中の1つの巣に、割れた卵がありました。おそらくウミネコが温めていた卵が、不運にも割れてしまったのでしょう。
その卵をしばらく眺めたのち、卵をつつき始めました。つついているのは卵の殻ではなく中身の方。一見すると、ただ割れた卵の中身を食べているだけのように見えますが、そうではありません。よく見ると、卵の卵黄だけをついばんでいます。くちばしの大きさから、卵黄だけをついばむのはとても難しそうです。しかし、その様子からは決意のようなものを感じられます。それは「絶対に黄身だけを食べるんだ」という決意です。
器用にくちばしを使って卵の黄身を食べ終えると、再び空へと飛び立っていきました。
キミトウゾクカモメとは?
これがこの鳥の習性です。鳥の名前は「キミトウゾクカモメ」卵の黄身が大好きで、いつも黄身を食べたいと思っています。しかし、黄身はなかなか見つけられないため、仕方なく他のエサを食べてお腹を満たしています。そのため黄身を見つけたときの素早さはどんな鳥も敵いません。
一説にはハヤブサの時速390キロを超えるとも言われ、別名「シューティングスターダイブ」と呼ばれています。
キミトウゾクカモメの特徴
外見の特徴は鮮やかな黄色のクチバシで、黄身ばかりを食べるため鮮やかな黄色になったと言われています。その証拠として若いキミトウゾクカモメはクチバシが黄色くなく、ほかのトウゾクカモメと見分けがつきません。黄身をたくさん食べてきた壮年期の個体だけが黄色くなるのです。
さらにこの鳥には面白い習性があります。それは誤って白身を食べてしまったとき、その場を飛び去ってしまうのです。黄身がまだ残っているにもかかわらずです。そして残された黄身は、他のキミトウゾクカモメが食べるのです。これは掟なのか、ただテンションが下がるからなのかは分かっておらず、早期解明が望まれます。
キミトウゾクカモメは黄身が大好き
このようにキミトウゾクカモメは黄身が大好きでたまらない。一方白身が苦手という面白い鳥です。
人間と同じでカモメにだって好き嫌いがあります。
もし、海でカモメを見つけたときはクチバシをよく見てみてください。くすんだ黄色をしていたら、それは黄身を食べたくてもなかなか食べられない、お腹をすかせたキミトウゾクカモメかもしれません。